183日ルールは存在しない。1年の半分を海外で過ごせば日本非居住者になれるは嘘である。
海外に就職、留学経験がある人は聞いたことがあるはずです。
「183日ルール。」
住民票を抜き、183日以上海外に住んでいれば、日本で税金を納める必要が一切ないというルールです。それが先日ちょっとした悲報がありました。
ずっと盲目的に存在していると信じ込んでいたこの「183日ルール」が、正式には存在しないことが分かったんです。
元国税調査官であり、海外在住の方に教えてもらったことなので、この情報は正確に近いでしょう。
そこで今日は、この183日ルールという名の真実を、正確に把握をしておかないと危険だと判断したので記事にしました。
目次
1.183日ルールのおさらい
まず、183日ルールについて、おさらいするとこうなります。
ポイント ー 183日ルールとは?
183日ルールは租税条約による取り決めの1つ。租税条約を締結している2つの国で給与がある場合に、その給与に対してどちらの国で課税するのかを取り決めるもの。基本的に「183日を超えて滞在した国で課税される」あるいは「滞在日数が183日以内であればその国では課税されない」。この理解で問題がないケースも少なくありませんが、一部の方には予期せぬ課税関係が発生する可能性があるため注意が必要。
端的にいうと、1年の半分(183日以上)を過ごす国で税金を支払べき、という考えのことです。
海外留学や駐在員として派遣される人は、数年以上海外に住むことになることが多いので1年の半分以上(183日)を海外で過ごすことが多いです。
そうなると、日本の住民票を抜き、非居住者となり、もろもろ日本の税金を支払うのを辞めた方が「お金が残る」ということになります。
※もちろんその間、留学先・派遣先の国で税金を納める義務はあります。
そもそも非居住者ってなに?という方は、以前、日本非居住者の税金についての記事で言及しているのでご覧ください。
2.残酷な183日ルールの真実
ここからが、183日ルールの重要なところ。
僕も含め大概の日本人が勘違いしているところなので、気をつけてほしいポイントです。
まず、183日ルールなんてものは日本の租税条約には記載されていない。
え、租税条約に書いてないの?
と、僕自身もびっくりしたのですが、日本の租税条約には「183日以上海外に住んだら〜〜」といった記載は一切書かれていないのです。
実際に調べてもそんなことは明記されていません。
じゃあ、なんで183日ルールなんて存在してるの?
確かに183日ルールは存在しています。
しかしそれはあくまで、「海外諸国の租税条約」に記載されているという話が事実です。上にも書いたように日本の租税条約には記載されていない。つまり、日本国内では183日ルールなんてのは存在しないのが真実なのです。
3.日本国では、グレーゾーンの総合判断
私が拠点を構えていたマレーシアやシンガポールであれば、183日ルールはしっかり存在しているので、183日以上の海外滞在で納税義務を免れる。
しかし、日本ではそうは行かない。
たとえ日本から住民票を抜き、183日以上海外滞在したとしても、日本への納税義務が発生しないとは言い切れない。これが日本国での残酷な真実です。
では、日本は、海外滞在日数ではなく何を基準にしているの?
ここがグレーゾーンと言われているところです。
日本では「客観的事実にもとづく総合判断」という形式がとられています。
ですから、明確にこれをすればOK、これをすればセーフという基準が日本にはないのです。つまり、グレーゾーン。
あなたが海外に住み、日本に税金を納めないとしたら、それを証明するために日本の国税は「客観的事実にもとづき総合的に判断」をするのです。
4.客観的事実を積み重ね、ポイントを高める
では、その客観的根拠とは何をみるのでしょうか?
例えば、
・「ビザ」
これは現地で働いているか大きな客観的根拠に基づきます。ビザを取得しているかどうかは、海外居住している証明として一番の大きなポイントです。
・「契約賃貸」
住んでいる場所が証明できることは、生活基盤としての証明になります。生活拠点がしっかりあることで、客観的事実としてのポイントアップに繫がります。
・「日数」
たしかに、183日ルールは日本には設けられはいませんが、生活の大半を海外で過ごすのであれば、パスポート上の滞在日数も客観的事実です。
その他、このようなたくさんの客観的根拠となる事実を重ね合わせた結果、総合的に判断しますよー、というのが日本側のスタンスです。
ですから、僕達がやれることは「ポイントを上げる」です。
できるだけ多くの客観的事実を残して、海外で生活している証明を提出することができれば、日本国も認めざるをえません。
※実際に国につっこまれるのは証明しろと言われたときくらいです。つっこまれたときに証明できるものを残しておきましょうということです。
事例1.滞在日数が170ー180日近く日本だという場合
簡単な事例を話していきます。
当サイトのコメント欄に集まった海外在住者の声を題材に答えていきます。
Q1.住民票は抜いていますが、年間約170-180日ぐらい、実家に戻っています。相続税節税のため非居住者のつもりだったのですが、こちらのサイトを見て非常に微妙であることを知りました。非居住者としっかり認めてもらうには、日数を増やすほかにどうすれば良いのでしょうか?ちなみに海外の会社に籍を置いています。
海外在住で、住民票も抜いて生活している方からの質問です。
この方はビザ取得をして、生活もしていますが、1年の半分を日本で滞在しているという方です。
この方の懸念されるところは、
・ 年間約170-180日ぐらい実家に戻っている
ここくらいだと思います。しかしビザを所得していて、年の半分は海外でしっかりと生活して税金も納めているのであれば、ある程度の非居住者としての敷居はクリアしていると思います。
ただ、もう少し日本での滞在日数を減らした方が、ポイントとしては確実ですよね、
事例2.節税目的で日本を出る場合
次に節税目的で海外に出ようか検討している方からの質問です。
Q2.海外FX口座を使い、住民票を抜いて、節税目的で1年間バックパッカーのように海外旅行(特定の国に生活、仕事がない)をした場合、国税局からは、納税者とみなされる可能性はあると思いますでしょうか?グレーの部分で色々と調べてみましたが、よく分かりません。
この場合、非居住者者として183日以上日本を出てれば、日本への納税義務がなくなることを願っていることになりますが、上に書いたように日本に183日ルールは存在しません。
つまり、どれだけ海外に住んでいる証明となるポイントは、海外生活をしている「客観的証拠」をどれだけ積み重ねるかとなりますね。
もし、旅人として(PT)365日を日本外で過ごすということは、
- ・ビザなし
- ・住居なし
ということになりますので、生活拠点としての証明は難しくなります。
それでも、FXをしながら旅をする場合、証券口座のお金は動き続けるわけです。そして、証券口座から個人口座にお金をうつしたときには「所得」は発生するわけです。
その際に、海外の国で生活しているのであれば、海外国(住んでいる国)での納税ルールを適応すればいいのでしょうが、その証明がないわけですから。よってもし日本国から突っ込みが入ったら、なかなか厳しいことになると思います。
こういう投資で儲かった系のケースは多いと思いますが、移住するわけでもなく、節税目的だけの旅行なのであれば、日本に納税しておいた方がいいと思います。
5.節税したいなら、しっかり海外にベースをつくれ
正直、この記事をみて183日ルールが存在しないと知ったところで、ざわつく人はそこまで多くないと思います。
ただ、節税のために183日ルールを意識している人にとっては、とてもショッキングな事実かもしれない。
以前このサイトで「PTとは?パーマネントトラベラー」という記事で、永遠の旅行者となり、上手に節税をしながら生きていく方法を紹介しました。
しかし今は、パーマネントトラベラーになって、節税しようなんて考えない方がいい。
理由はこの記事で書いたように、日本に183日ルールなんてものは存在せず、海外在住者としての客観的根拠が必要になるからです。
パーマネントトラベラーになったからといって、ビザもない、住居もないのであれば、当然、客観的な証明にならない。
もし、183日以上海外に滞在して、パーマネントトラベラーで生活していたとしても、この客観的根拠がない場合は、日本に納税義務が発生するリスクは極めて高い。
【まとめ】海外に住むことを甘くみるな
今、節税目的で海外に進出する人が増えてきています。
それは仮想通貨の影響かもしれないし、グローバル化の波かもしれない。とにかく深い理由は分からないけれども、ただ海外に住めば、節税できるってのは違うと思っておいた方がいいです。
まずは、海外にしっかりとした拠点を構え、生活基盤をつくる必要があります。
そして、海外に拠点を構えるというのは、旅行とはまったく違う。
あらゆる面で生活が変わります。当然ストレスも溜まります。言語や文化もまったく違う土地で暮らすことは本当に大変なのです。
僕の知りあいでも、家族で移住するが、子供の教育面や、文化面、食事や人間関係といった、あらゆるデメリットで帰国する人がいます。
節税のためだけに海外に進出しても、金銭的メリット以外で良いことなんてのは、実はあまりなかったりします。
そのへんの天秤をかけて、本当に何が1番大切なのかを考えてみるのも良いかもしれません、